今注目のエラグ酸について、どんな働きがあるかご存知ですか?肥満が気になる方にはぜひ知っておいて頂きたい栄養成分なのです。
肥満の予防には、食事と運動のバランス改善が不可欠です。けれども極端な食事制限はなかなか長続きせず、精神的にも悪影響を与えがち。運動も、継続的に行うことが大切とはわかっていても、強靭な精神力が必要です。ダイエットはまさに自分との闘い。何度もくじけてしまうのは仕方ないことなのかもしれません。
そこでいま注目されているのが『エラグ酸』です。ポリフェノールの一種ですが、これが脂肪の持つ特質に有益な作用をもたらすことがわかってきました。
このエラグ酸のことを理解するために、まずは基本の勉強、脂肪のイロハから学んでいきましょう。
食生活の欧米化や運動不足から肥満の人が急増していると言われています。肥満の予防は、生活習慣病から身を守るためにも大事なこと。
お腹の周囲径の太さ、体重増加や肥満に悩む人々が多い、といえば、日本以上にアメリカはさらに深刻です。
そんなアメリカで注目を浴びているのが『エラグ酸』です。
『エラグ酸』について、ご存知の方はまだ少ないのかもしれません。エラグ酸は、肥満気味な人の体重、体脂肪、血中中性脂肪、内臓脂肪、ウエスト周囲径の減少をサポートし、高めのBMI値の改善に役立つという研究報告のある成分です。エラグ酸は植物によって生成されるポリフェノール(色素や苦みの成分)のひとつで、19世紀に発見された成分です。
#【出典】Functional Foods in Health and Disease,10(4),180-194(2020)
近年の研究や試験によって、エラグ酸のその多様で優れた作用が確認され、話題になっており、これからはますます注目を浴びそうです。
<BMIは目安のひとつ>
肥満度の判定には、国際的な標準指標であるBMI(Body Mass Index)=
[体重(kg)]÷[身長(m2)]が用いられます。男女ともに標準とされるBMIは22.0ですが、これがなぜ標準かというと、統計上、肥満との関連が強い疾患に最もかかりにくい数値とされているからです。
とはいえ、身長と体重から単純に計算されたBMIだけでは、内臓脂肪が多いのか筋肉質なのかはわかりません。また、どこに脂肪がついているかでも危険性は異なります。BMIだけに一喜一憂せず、ひとつの目安としてまずは捉えてみましょう。
<体脂肪の蓄積>
食習慣の変化や身体活動量の低下などにより、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、過剰分が体脂肪として蓄積される。これが肥満のはじまりです。
つまり、食べたものは筋肉や内臓に取り込まれ、代謝されエネルギーとして使われますが、使われなかったエネルギーは、いざという時のために体脂肪などに蓄えられていくというメカニズム。だから、筋肉や内臓が必要としている以上の栄養を摂ると、体脂肪としてどんどん蓄積されていってしまうわけです。
ここで怖いのは、体脂肪を構成する脂肪細胞は、栄養を取り込むと膨らみ、分裂し増えていく、ということです。
さて、上記のように書くと、「脂肪って怖い!いらない!」と悪者扱いしてしまいそうですが、脂肪そのものが悪者なのではなく、増えすぎた脂肪や蓄積される場所が問題なのです。エラグ酸は肥満気味な人の体重、体脂肪、血中の中性脂肪、内臓脂肪、ウエスト周囲径の減少をサポートする研究報告がありますが、体脂肪率が標準よりも多い「肥満気味な人」向けであることを知っておきましょう。
身体につく脂肪、体脂肪にも与えられた役割があります。それは、『エネルギー源や体の機能を正常に保つために必要な、ホルモンなどの物質を作る構成成分』『体温を保つオーバーコート』そして『圧力や衝撃から身体や内臓を守るクッション』、以上の3つが体脂肪の基本的な役割です。ですから、適度な体脂肪は生きていくために必要不可欠なものなのです。
また、体脂肪は、大きく分けて「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2つの種類。さらには「異所性」という脂肪を加えると、3つの種類から成り立っています。
●皮下脂肪
全身を覆うように皮下につく脂肪で、エネルギーの貯蔵と、身体の外から受ける気温や圧力を受け止める役割をしています。
最初に蓄えられるのは、この皮下脂肪で、全身につきますが、特に女性の下腹部や太もも、お尻などにつきやすく、指でつまめるのが特徴です。
●内蔵脂肪
皮下脂肪として蓄えきれなかった脂肪は、内臓のまわりにつく内臓脂肪として蓄えられます。これは内臓が動きまわらないように固定する役割も持っています。しかし、内臓脂肪は皮下脂肪より活性度が高いため、増えすぎると、脂肪細胞からさまざまな物質を分泌して、身体に影響を与えるというリスクを併せ持っています。
お腹がぽっこりと出るようになった、指でつまめない、こんな場合は内臓脂肪が増えすぎているからかもしれません。
●異所性脂肪
内臓脂肪にも蓄えきれずに余った脂肪は、異所性脂肪として蓄えられます。この異所性脂肪とは、肝臓やすい臓、筋肉など、本来溜まるべきではない場所に溜まってしまうもの。外見からはわからないため、痩せて見える人にも溜まっている場合があります。
以上のように、内臓脂肪と皮下脂肪とでは性質や働きが異なります。また、どこに脂肪がついているかで、健康への危険性は大きく異なってきます。
皮下脂肪が多くつく肥満を「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型肥満)」、内臓脂肪が多くつく肥満を「内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)」と言います。
また、一般的に、皮下脂肪は女性につきやすく内臓脂肪は男性につきやすい、ともいわれています。
「内臓脂肪型肥満」の人が、高血糖・高血圧・脂質代謝異常ののうち2つ以上を併発している状態を「メタボリックシンドローム」といいます。メタボ、メタボと簡単に片付けてしまいがちですが、実はこれ、とても危険な状態を指しているのです。
さらに、内臓脂肪は、食べ過ぎや運動不足の生活が続くとすぐに溜まってしまうということです。
ただし朗報もあります。内臓脂肪は、溜まるのが早い反面、食事の見直しや運動によって減る速度も速いといわれています。対して皮下脂肪は、健康へのリスクは低いものの、一度ついてしまうとなかなか減りません。
エラグ酸は「肥満気味な人」の体重、体脂肪、血中中性脂肪、内臓脂肪、ウエスト周囲径の減少をサポートするというという点から、肥満気味とはどのような人を指すのか、そもそも脂肪とは何かについてをご紹介しました。
エラグ酸は、肥満気味な人の体重、体脂肪、血中中性脂肪、内臓脂肪、ウエスト周囲径の減少をサポートし、高めのBMI値の改善に役立つという研究報告があり、その有用性に注目が集まっています。これからのさらなる研究に期待しましょう。
管理栄養士。国際中医薬膳師・国際中医師・調理師
多数のメディアでダイエットレシピの提案や栄養専門調理実習講師、栄養関連の監修を行う。著書『太らない食べ方 新装版』『どっちが太らない』/毎日燃えメシ (エイ出版)他。
管理栄養士 清水加奈子