食物繊維は不溶性と水溶性の2種類に分類することができ、それぞれ違う働きをしています。水溶性食物繊維は、腸内の善玉菌を増やしたり、短鎖脂肪酸の産生を助け、腸内環境を整える働きがあることが分かってきています。
また、水溶性食物繊維は、食事中の糖やコレステロールの吸収を遅らせるため、食後血糖値や食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする働きがあることも知られています。
食物繊維の摂取割合は、不溶性食物繊維2に対して、水溶性食物繊維1で摂るのが理想的と言われていますが、水溶性食物繊維の多い食品はどのようなものか、1日にどのくらい摂るのがよいのか、水溶性食物繊維についてご紹介します。
腸内環境を整えるために、水溶性食物繊維は必要不可欠な成分です。水溶性食物繊維には、「血糖値上昇抑制作用」と「コレステロール上昇抑制作用」と共に、腸内のビフィズス菌をはじめとした善玉菌の栄養となり、腸内環境を整える働きもあることが知られています。
普段の食生活で、水溶性食物繊維を食品から摂れていますか? 水溶性食物繊維はどのような食品に含まれているのでしょうか? 参考までにいくつかご紹介しましょう。
大麦(押麦・乾)[水溶性食物繊維量 4.3g]
西洋カボチャ(生)[水溶性食物繊維量0.9g]
オートミール[水溶性食物繊維量 3.2g]
大根(皮なし・生)[水溶性食物繊維量0.5g]
納豆[水溶性食物繊維量2.3g]
トマト(赤色、生)[水溶性食物繊維量0.3g]
キウイフルーツ(緑)[水溶性食物繊維量0.6g]
キウイフルーツ(黄)[水溶性食物繊維量0.5g]
生ピーマン[水溶性食物繊維量0.6g]
生しいたけ[水溶性食物繊維量0.4g]
バナナ[水溶性食物繊維量0.1g]
※出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)、可食部100g当たり
また、食品に含まれる水溶性食物繊維には、次のようなものがあります。
【水溶性食物繊維の種類】
ペクチン…野菜や果物に多い
アルギン酸、フコイダン…海藻類に多い
βグルカン…きのこや大麦に多い
難消化性デキストリン、イソマルデキストリン…でんぷんなどから作り出された水溶性食物繊維
日本人の食事摂取基準(2020年版)では食物繊維の一日あたりの摂取量について、18~64歳においては、男性は21g以上、女性は18g以上を摂取することが目標値とされています。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の摂取割合の理想は2:1となっているので、女性の場合は、摂取目標量の18g中6gを水溶性食物繊維で摂ることが理想です。
令和元年に実施された国民健康・栄養調査によると、1日一人当たりの食物繊維の摂取量の平均は、男性は19.4g(そのうち不溶性食物繊維が11.8g、水溶性食物繊維が3.6g)、女性は17.5g(そのうち不溶性食物繊維が11.2g、水溶性食物繊維が3.5g)となっており、現状では水溶性食物繊維は3g強しか摂れていません。
前段でご紹介した食品に含まれる水溶性食物繊維量を参考にしながら、女性の場合は普段の食生活にプラス3gを目標に摂れるように、食品を組み合わせて摂取するのがおすすめです。
水溶性食物繊維のかしこい摂り方は、食後血糖値の上昇を抑える作用に着目するならば、セカンドミール効果を狙って、水溶性食物繊維の多い食品を早い時間に食べるのがよいでしょう。
「セカンドミール効果」とは、ファーストミール(初めにとる食事)が、セカンドミール(次の食事)後の血糖値に影響を及ぼす考え方です。
例えば、昼食がどんぶりや麺など炭水化物中心になりがちな方の場合、昼食後の血糖値の上昇が大きくなることが予想されますので、朝ごはんに水溶性食物繊維が豊富な食品を意識して取り入れるとよいですね。例えば、白米をもち麦ごはんに変えるといった置き換えの方法や、朝ごはんに納豆やフルーツをプラスするのもよいでしょう。
特に納豆は1パック(50gの場合)に水溶性食物繊維が1.2g、ひきわりでも1gが含まれていて、取り入れやすい食品の一つです。水溶性だけでなく不溶性食物繊維も含まれているのでおすすめです。
また、ヨーグルトなどの乳酸菌を含む食品も一緒に摂ることで、腸内環境も整いますのでおすすめです。健康的な毎日のために、一定の血糖値を保つ意識を持ち、食後血糖値の上昇を穏やかにする食品を意識的に取り入れるなど、食生活の工夫をしたいものです。
朝ごはんに水溶性食物繊維を摂ることが難しくても、水溶性食物繊維の摂取量は不足気味ですから、昼食でも夕食でも、取り入れられるタイミングで水溶性食物繊維を豊富に含む食品を取り入れていきましょう。
例えば、キウイは、身近なフルーツの中では水溶性食物繊維が多い食品なので、積極的に取り入れるとよいでしょう。また、黄肉種は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の割合が2:1で含まれているので理想的なバランスの食品です。また、大麦は100g中に4gもの水溶性食物繊維が含まれていて、水溶性食物繊維が豊富な食品です。ご飯を炊くときに大麦を加えて炊くと手軽に水溶性食物繊維を摂取できます。
このように、主食の白米に大麦をまぜることで水溶性食物繊維を手軽に増やしたり、おやつの置き換えや毎食のデザートにフルーツを取り入れることで、水溶性食物繊維が増えてバランスが整ってくるでしょう。無理なくプラスする方法なら長く継続することができそうですね。
食生活に食品をプラスするのが難しい方は、水溶性食物繊維を手軽に摂れるドリンクやサプリメントを利用するのも一つの方法です。難消化性デキストリン、イソマルトデキストリンなどと表記されているものが水溶性食物繊維なので、そういった成分を含むサプリメントを摂取してみましょう。
食物繊維は大きく分けると不溶性と水溶性に分かれるとご説明しましたが、同じ分類に属する食物繊維でも、それぞれの構造は異なり、同じようにふるまうわけではありません。腸内細菌は、その種類によって好みの食物繊維が異なると言われており、食物繊維によっておなかが緩くなったりおなかが張ったりする方は、摂取する食物繊維を変えることで解消する場合があります。おなかにあうものをみつけてみましょう。
イソマルトデキストリンは、とうもろこしなどの穀物由来で、でんぷんに近くユニークな構造をした水溶性食物繊維です。イソマルトデキストリンは、食事中の糖やコレステロールのサポートや、善玉菌を増やすなどの働きがあり、比較的少ない量で手軽に取り入れられます。水溶性食物繊維にもいろいろ種類がありますので、体に合っているかどうかを確かめながら、無理なく摂取できるとよいですね。
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管理栄養士免許、NR・サプリメントアドバイザー資格保有。
大学卒業後、サプリメントのOEM企画開発の会社に入社。機能性成分や商品作りのプロセスについて学ぶ。その後、株式会社メタボリックに転職し、商品企画開発室にて様々な商品を企画開発中。
管理栄養士 T